スエーデンではこの時期になると季節にちなんだイベントが増えるが、巷の状況にお構いなく、人は仕事関係、親せきや友人たちと年中適当に理由をつけてよくパーティーをする。我が家も例にもれず今年も随分人を呼び、お招きにも預かった。月に一度、ネットで評判 のいいレストランを選び、家族そろって外食するのが数年前から習慣になっている。自宅では味わえない雰囲気や珍しい料理にワクワクするのは日常のマンネリ解消になる。そうやって見つけたお気に入りの場所には、後日友人たちと行く。仕事関係のお呼ばれで、デイナーショーやシーフードクルーズでしばしリッチ気分に浸るのも良い。よそのお宅に呼ばれて住まいや食習慣ののぞき見も楽しい。しかしこのところ私が最も気に入っているのは我が家にお客を招いて、一風変わったサービスを提供することだ。特に日本のことに疎い現地人を招くと、この快感は倍増する。自分の友人知人以外に、亭主や娘の付き合いにまで声をかけて適当な理由をひねり出し、ご招待するのである。大概呼ばれた相手はお返しをしてくれるのでそこそこ採算は取れる。
そんなわけで、直近のスケールの小さい「和食の夕べ」と題して友人夫婦を招いた時のことをお話したい。同市内に住む再婚同士のこのカップルはお互い3人づつの成人した連れ子がいて、とても仲が良い。もともと亭主同士の仕事関係の付き合いだが、数年前に夏の休暇でスペインに滞在中、ばったり町で会ったのがきっかけで親しい付き合いが始まった。彼らは私たちがホリデーフラットを持っている町に友人夫婦2組と共同で別荘を買い、スケジュールを組んで使っているそうだ。それ以来、向こうのレストランで何度か食事をする機会があったが、自宅に招くのは初めてだった。
見た目は外人の私もここでの生活が長く、とっくに同化していると思い込み、普通のスエーデン家庭に呼ばれたと予想していたらしい。ところが家に入るなり無理やり靴を脱がされスリッパに履き替え、リビングに入るといきなり得体のしれぬ上げ底床の上に布団のかかった台が目に飛び込んできた。テーブルに着く前に生け花(ネットの生け花動画見て仕上げた自己流)と掛け軸を愛で、まずはシャンパンでウェルカムの乾杯をして宴会スタート。
数日前からどの器を使うか試行錯誤した末、黒塗お盆でオードブルとデザートを出すことに。料理より、いかにして日本で仕入れてため込んだ食器を見せびらかし、和の雰囲気づくりをアピールするかにかなりエネルギーを使った。着席のタイミングに合わせて熱々のおしぼりをあてがい(キャー、機内サービスみたい!と嫁さんが叫び)、料理を出す度に箸の使い方や食べ方を指導。飲み物は熱燗の日本酒と客持参のイタリアワインに緑茶。ダイニンテーブルを囲んで、前菜はお吸い物、寿司、てんぷら、メインは電気鍋ですき焼きを楽しみ、ほぼ満腹になって気持ちに余裕が出たところで、こたつコーナーへ移動を命令。大柄の男たちは狭いこたつに着席するのに汗かき試行錯誤し、一度座ったら出るのに四苦八苦ながらも物珍しさに盛り上がった。デザートはホームメイドの抹茶アイスクリーム、チーズケーキ、おかきに煎餅、飲み物は緑茶とコーヒー。「今夜はすべてが体験イベント気分です!」とお客はたいそう感動していた。
とりあえず予定を消化して客と一緒にこたつ
で一休みしていたら、男二人がこたつから這
って脱出、食後に放置されていた食器を次々
に食洗器へ移動させ、気にするなと声をかけ
ても、「料理担当は休憩!」と言って、鍋窯
を残してほとんど片づけをやってくれたので
ある。大概こちらのお客は(特に男)よそのキッチンに気軽に出入りして人によっては給仕の
段階から手伝う。これがあるからお客を呼ぶのが苦にならないとも言える。
正直プラン作り、買い物、調理に演出とかなりの時間と体
力を要するけれど、自分の実力発揮のチャンスと思うとモ
チベーションが上がり楽しくて仕方がないのである。こう
言う事を度重ねていくうちに、また一仕事終えたという達
成感もある。この後、仕事関係のシーフードクルーズとホテルのクリスマスディナーのお呼れが待機している。次の出番は親戚持ち寄りクリスマスパーティーでの料理となりそうだ。想像するだけでワクワクしてきた!
【写真、左上より】
- タパスレストランで
- スペインの田舎のレストランでのもてなし
- 自己流生け花
- 我が家のこたつコーナー
- 友人夫妻と和食の夕べ
- オードブル、すき焼き
- こたつで団らん
- デザート
- 結婚60周年を家族と祝う義父母
- お祝いパーティ―のデザーㇳは娘の手作りアップルムースケーキ